裸足のランナー ラポール訪問看護ステーションより

人の記憶というのは曖昧なものだ。

私の父は、若い頃マラソンが得意だったと聞いていた。愛媛マラソン、南予マラソン等に出場し、優勝、準優勝という輝かしい成績を残していたらしい・・・と私は長年信じていた。

が、先日行われた愛媛マラソンが第46回であるということを知り、何となく不安になってきた。私が生まれる数年前から開催されていた大会で、父は本当に走っていたのだろうか。又、当時家は貧しく、靴が買えなかったため、父は裸足で走っていたと聞いていた。父が大切にしていたスクラップブック、色の変わってしまった新聞記事の見出しに「裸足のランナー」とあるのを私は見た記憶があるのだ。新聞の記事になるほどだから、きっと大きな大会に違いない。父はアスファルトの上を裸足で走っていたのだろうか。

真相を確かめようにも、父はいない。そこで、母に聞いてみたのだが、結婚する前のことなので、何の大会だか分らないという。確かに長距離の方が得意だったということ、「吉田・宇和島間を走らせたらバスより速い」と豪語していたということ、その頃もらった賞品の火鉢は現在では家の庭で盆栽を植えられているということ、実家に残っている賞状は、学生時代の南予地区大会・1500メートル1位というものであるということがわかった。変色したスクラップブックに何があったか、母は知らないという。真相は闇の中だ。

父は44歳で他界した。私が14歳の時だった。父を失った悲しみを忘れるために作り上げた私の妄想だったのだろうか。

「裸足のランナー」  私の永遠のヒーロー・・・

text by Y.Y

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